蔵の中には、霊気と思われる唯ならぬ空気感が有り、その発信者と思われる存在が2階祭壇横に立っていました。それは、髪結が解け薄汚れた日本人形がコチラを向いて立っていました。「この人形はご存知ですか？」「姉のモノです。無くしたと聞いていたので、こんなところにあるとは気づきませんでした。」と、ご主人は視線を逸らしながら話されたので、この人形には色々なエピソードが有る様な気が致しました。「なぜ、この人形がコチラに有るか、ご存知ですか？」「多分、姉がイタズラをした時、祖父が姉の人形を取り上げて、蔵に隠していたんだと思います。」「そうでしたか、、。とりあえず、祭壇の仏像と人形を、お宅の仏壇で供養しても良いですか？」「それは、構いませんが、、何なら先生のところでお焚き上げして貰えませんか、、？」と言われました。蔵を出て、明るいところで見ると、仏像は手のひらサイズの銅製だと思われました。また、人形の方は30cm位の大きさで、着物も大分傷んでいました。早速、供養の準備に入りお経を唱えだすと、母親がシクシク泣き出しました。何か心当たりがあるのか、、そんな事を思いながら供養を終えました。引き続き鑑定結果を、両親にお伝えしました。「娘さんは、小さい頃の何らかのトラウマがあり、絶えず周りの事を気にする性格になった様です。友達と言える人も少なかった様に思います。ですから、人間関係を築くのが苦手で、社会人になっても克服出来ずにいると思います。先ずは、彼女の興味の有る事に周りの人間が応援してやる事です。娘さんの特性としては、美容関係、メイク、ファッション、アクセサリーデザイナーとしての才能が有るのですが、何か関心が有る事はご存知ないですか？」すると母親が「娘はネールアートやメイクに関心が有って、通販ではそれらの関連する商品を購入しているみたいです。」「そうでしたか、、。では、もう少し本人が自覚する迄、様子をみてあげて下さい。私はこの人形が気になるので、帰って引き続き供養したいと思います。」と言ってＡさんの実家を後にしました。数日後、Ａさんが和順庵を訪ねて来ました。「先生、先日は有難う御座いました。先生が帰った後、姉が母に自分の事をどのように言っていたか尋ねたみたいです。母は先生が言われた様に伝えると、嬉しそうにしていたと言ってました。また、姉は毎日ではないですが、朝起きてくる様になったみたいです。でも、父親とは相変わらず会話は無い様です。」「そうでしたか。少しは進歩した様ですね。ところでＡさん、、人形の事はご存知ないですか？それとお父さんの姉についても知りませんか？」「母がこの家に嫁いだ頃には、曽祖父は亡くなっていたのですが、曽祖母は認知症で施設に預けられていたみたいです。当時、母が見舞いに行った時、曽祖母が変な事を言ったみたいで、、。」「曽祖母は、何を言われたのですか？」「母は聞き違いかも知れないけどと言いながら、、一度だけ曽祖母が、父の姉は殺されたと、、言ったみたいです。その事を父に話すと、凄く怒られたと言っていました。」と、その話しを聞いた時、供養中に母親が涙した事は、本当の事が解明出来ずに亡くなった義理姉に対する贖罪の気持ちからか、、。Ａさんが帰られた後、私は日本人形の髪を整えてやりました。すると、人形の表情が幾分和らいだ気がいたしました。
