突然、私を襲った頭痛に顔をしかめるとCさんが「先生、どうかされましたか？」「いえ、ちょっと頭痛持ちで、、たまに有るんです。」と言いながらCさんの顔を見ると、あの夢の事が頭に浮かびました。「Cさん、お父様は、お病気だったのですか？」「父は事故で亡くなりました。」「そうでしたか。車の事故ですか？」「先生、気になりますか？」「実は、気になる事が有って、、。もしかしたら、Cさんのお父様が、何らかの影響を与えてるのかも知れません。」と言いましたが、Cさんは、一瞬うつむかれ、話したくないような雰囲気でしたが、意を決した様に、、当時の事を静かに話されました。「貧しい家族でしたが、父は一人娘の私を溺愛してくれました。その日は、家族で昼ご飯を食べていました。突然、父が私の好きなミカンを買いに行くと言いだしましたが、母は今日は雨が降っているから、また今度にしたら、、って言ったんですが、父が〇〇子が好きだから買ってくると、家から歩いて20分程の青果店に行きました。ところが、父は待てど暮らせど、中々帰ってきませんでした。母は、買い物を口実に飲みに出かけたと思っていましたが、外が薄暗くなってきた頃、、急に家の外が騒がしくなっていました。すると、近所のおじさんが、オタクのご主人が事故に有った様だと聞いて、驚いた母は私をおじさんに預けて、父の元に向いました。幼いながらも私は悪い予感がしました。おじさんの家で夜ご飯を食べていた時、母が近所のおばさんに寄り添われながら帰って来ました。母は、おとうちゃん死んだわ、、と言いながら私を抱き寄せました。私は、何が起こったのか受けとめる事が出来ず、母の泣く姿をいつまでも見ていました。後で分かった事ですが、父は袋一杯にミカンを持ち傘をさしているところを、前から来た車に跳ねられた様です。辺りはミカンが散らばっていて、片腕が、事故現場から20メートル先で見つかった様です。翌々日、父は亡骸となって家に帰ってきました。父は、鹿児島出身で、母とは駆け落ち同然で出て来た事もあり、身内といっても近所の人位しか居なかったので、自宅で寂しいお葬式となりました、、。」と話されているCさんの目には、涙が溢れていました。辛い過去は、誰しも思い出したくないものです。「Cさん、辛い事を思い出させて、すみませんでした。」と私はCさんに謝罪致しました。すると、ズキンっと、、右側頭部に頭痛がしました。すると、Cさんが、うつむきながら「お父ちゃんが死にました。お父ちゃんが死にました。なぁ、、なぁ、、面白いやろぉ、、なぁ、、なぁ、、。」と、言いながら、Cさんは上目遣いで私の顔を見ました。その鋭い目と表情は、先程とは明らかにCさんとは違う顔になっていまた。その顔は、まるで自分のヘマを嘲笑うかの様に見えました。しかも、その声は少しかすれた男の声の様にも聞こえました。私は、思わず傍らに有った念珠を取り、Cさんのうずくまる背中をさすりながら「Cさん、Cさん、、大丈夫ですか？」と、不動明王の真言を唱えながら声をかけました。
