早朝と夕方、散歩に出掛けます。健康の為でも有りますが、知人から預かった犬の散歩も兼ねています。元々、生き物は嫌いでは無いのですが、ペットショップで買って迄、飼おうとは思いませんでした。ですが、いざ飼ってみると我が子の様な気持ちになり、つい甘やかしてしまいます。かかりつけの動物病院で検診してもらうと「ワンちゃんですが、内脂肪が気になりますので、おやつを控えて下さい。」と言われました。それ以来、おやつを控えながらワンちゃんのダイエットも兼ねて長い距離を歩く様になりました。朝の5時からのお勤めが終わり、一目散に自宅に帰ると丁度6時、まだかまだかと催促の犬の鳴き声が、ドア越しに聞こえてきました。早速、リード付けてやると、ドアを開けた途端、勢いよく走り出しました。暫く歩くと、地蔵堂の前で早朝から50代位の女性が、手を合わせて御参りされていました。「おはようございます。」と挨拶すると、その女性は振り向きながら「おはようございます。可愛いワンちゃんですね、、触っても良いですか、、。何ていう犬ですか、、。」「ミニチュアシュナウザーです。」「そうですか、、私もワンちゃん飼ってたんですが、去年死んじゃって、、。」「そうでしたかぁ、、。」犬を触る彼女の顔は、何となく病み上がりの様な、色白くやつれた顔に見えました。それからというもの、翌日も、その翌日も、彼女は、私達を待つかの様に、地蔵堂の前で合掌しながら立っていました。こんな事が1週間も続くと、散歩コースを変えようかと思ったりしましたが、犬と会う事を楽しみにしているかも知れないと思って、変えられませんでした。その日は、朝から雨が降っていました。流石に今日は居ないだろと思いながら、散歩に出かけると、、傘をさして彼女はお堂の前に立っていました。「おはようございます。」「おはようございます、、今日はあいにくの雨で、お散歩大変ですね、、。まぁ、こんな可愛いレインコート着せて貰って、、私もお散歩の時は、毎日の様に服を着せ替えていたんですよ、、。」「そうでしたか、、。今日はこんな天気なんで、早々に帰ります。」と言って、彼女と別れました。こんなに毎日、お地蔵さんに御参りするのは、何かあったんだろうと思いながら、明朝、彼女に聞いてみようと思いました。翌朝、いつもの様に地蔵堂の前に行くと、いつも居るはずの彼女の姿はありませんでした。顔色が悪かったから、体調でも崩されたかもしれないと思いながら、地蔵堂の前を通り過ぎようとした時、線香が焚かれていました。「今日は、早くに御参りされたのかなぁ。」ところが、翌日も、、その翌日も線香だけが焚かれていたのです。そんな日が5日経った頃、ある一軒の家の前に来たときに、フェンスのところで、犬がクンクンしだしました。
次回つづく
