「いやぁ〜先生、お忙しいところ有難うございます。本日の会場はコチラになります。」と、主催者Ａ氏65歳女性に案内されたのは、窓際角の外気を感じる寒々とした場所でした。私は月に何度か、出張鑑定に出向きます。鑑定会場は、ホテルやお店などの商業施設で、多い月は2週間位行く事もあります。今日から3日間、コチラのブティックで運勢鑑定を致します。「先生みたいな素晴らしい方とお会い出来るなんて、私は幸せです。この3日間、先生には色々と学ばせて頂きます。今日は私のお世話になっているお客様をお呼びしていますので、宜しくお願いします。因みに今日お越しになるお客様は、会社を幾つも経営されている社長の奥様Ｃ様67歳です。いつも、私にパワーを与えてくれる明るい方ですが、色々と悩みが多い人で、先生に是非鑑定して頂きたいのです。」と言いながら、私に深々と頭を下げられました。Ａ氏は、私に表面上では尊敬の念を持たれている様ですが、彼女を見た瞬間、、この人とはあまり関わりたくないと直感的に思いました。予定より1時間位遅れて、お客様のＣさんがお見えになりました。店の入り口辺りでＡ氏とCさんの話し声が、聞こえてきました。「私、占いみたいな胡散臭いの嫌だわ、、。ネェ、聞かなけゃダメ、、。」と言いながら、コチラに来られ席につかれました。「今日はお忙しい中、有難うございます。今から鑑定させて頂きますので、お名前と生年月日を書いて下さい。」「私が言うから、貴方が書いてくださらない、、。」と、全く興味が無さそうな様子でした。代筆しながら彼女を鑑定すると、確かにお金に縁が有るものの、出費も大きいので、ご主人は大変だろうなぁ〜と思いました。「失礼ですが、ご主人の名前と生年月日も教えて頂けますか、、。」と、ご主人も鑑定したところ、夫婦の関係はすでに冷め切っていて、それぞれが別の方向を向いている感じがしました。人生の前半は、夫婦で苦労された節があるものの、お金が入ってきた途端、今まで我慢してきた欲求を、ここぞとばかりに使い回しているのだろう。また、Ｃさんは金持ちイコール権力者と思っているのか、謙虚さもなければ、私や周りのスタッフに対しても、終始横柄な態度をされていました。鑑定中にも「アラッ、これ素敵、、お幾らするの、、。でも、先月も買ってあげたしね、、。」と、その様な振る舞いが有っても、スタッフが作り笑顔でCさんをヨイショするのは、それだけ大切なお客様である事がうかがえます。Ａ氏が腰巾着の様にCさんを持ち上げるのも頷けます。無難に褒めてあげて終わろうと思いましたが、Ｃさんが「娘夫婦に主人の会社を継がせ様と思うんだけど、どうかしら、、。」と言われたので、娘夫婦も鑑定しました。すると、娘夫婦には離婚の相とお金で苦労する運勢になっていました。娘夫婦は、Cさんの会社で働いていて、共に重役待遇の様でした。「Ｃさん、娘夫婦が会社を継ぐのは辞めておかれた方が良いですよ。また、娘婿さんには商売の才覚はございません。」と、鑑定通りの答えを伝えました。もっと言い方を工夫したら良かったでしょうが、初動からCさんとは縁の無い方に思えたのと、Ａ氏に対して最初から興味のないCさんを来場させて欲しく無かったという思いが、そうさせたのだと思います。お店の事を考えれば、私も大人気ない対応だったと反省するも、時すでに遅しで、、Ｃさんの顔が、みるみる鬼の面相になっていくのが分かりました。すると、Cさんは「アッそう、、もう良いです！だから占いは嫌なのよ、、。」と吐き捨てる様に言って、席を立たれました。Ａ氏は心配そうに、Cさんを追う様に出口に向かいました。その事があってか、Ａ氏は私に対してだんだん言葉が少なくなっていきました。コチラを紹介下さった方から、Ａ氏は腰の低い誠実な人と紹介されましたが、初めて彼女を見た時から、この人はお客様というより利益の対象でしか見ていない様に思いました。それは、私だけの感覚かもしれませんが、人の顔が動物の様に見える時があります。因みにＡ氏の表情は、、まるで獲物を狙う蛇の様な目になっていたのです。世間には、この様な人は沢山います。また、この様な人が居るお店に限って、事務所の壁やトイレには、人生訓や商売の心構えの張り紙が有ります。ここのお店にも当然貼ってありました。内容を見ると、今の時代にしては古風な感じがしました。「損得よりも善悪を考えよ、、。」と、為になる商売の訓示ですが、この様なお店は往々にして、売り上げノルマがキツイ会社に思いました。人生訓には、良い事も書いてありますが、社員を洗脳する意図がある様に思えるのです。サラリーマン時代、朝礼の時は皆の前で社訓を言わされ「今月の目標は、〇〇〇〇万達成します、、。」と出来もしない目標を言わされたものです。今から思うと、当時は普通に思っていた事で有っても、今の時代を生きる若者には響かない様に思いました。それは、昔と違ってＳＮＳ上に他人の生き方や企業の在り方の情報が、溢れるほど掲載されているからです。若者は社訓の様な人間になるより、タイパ・コスパを重視した会社であるかを見ているのです。アフターなどと言う言葉は近年は聞かなくなりました。道理で、この会社には新入社員はおろか、若い社員はいらっしゃらない様です。この様な古い体質の会社では、若い人からすれば、魅力を感じない会社に映っているのかもしれません。Ａ氏とは最終日迄、コレと言った会話もなく終わりました。後味の悪い鑑定会になりましたが、出張鑑定ではこの様な対応は多々あります。俗世界の出来事を垣間見た瞬間でした。
