この話は、今から5年程前、東北のとある町を訪れた時の不思議な出来事です。出張鑑定で、お店の主催者の依頼で、Bさん当時80歳女性の鑑定する事になりました。主催者の話しによると、Bさんは、地元でも有名な資産家で、10年前にご主人を亡くされ、豪邸に一人で住まわれているとの事でした。Bさんには、娘と息子二人の子供が居て、息子夫婦は、近くに家を建て住んでいるのですが、娘の方は、今から2年程前に亡くなっています。娘さんは、結婚したものの、中々子供に恵まれず、姑から「子供が生まれなければ、〇〇家は耐えてしまう、、こんな娘と結婚させなかったら良かった。」と、悲しい言葉をかけ続けられた事で、娘は精神を患い、結局離婚され、実家に戻って来られました。すると、Bさんが娘さんの幼少の頃に買ってあげたフランス人形を、寂しさからか、いつも抱きしめながら生活をされていた様です。食事をするにも、トイレに行くにも、いつも娘さんの側には人形がありました。精神病だから仕方ないとはいえ、娘さんの人形に対する溺愛ぶりに、Bさんは娘の行動が異常に思えたそうです。離婚して2年が過ぎた48歳の時、娘さんは、睡眠薬を過剰摂取し、自室で亡くなられました。朝、起きて来ない娘の部屋に行くと、ベッドで眠る様にして亡くなっていた様です。また、娘の傍には、いつもの様に、人形が寄り添う様に寝かされていました。最初は、娘の形見として、仏壇の横に置いていましたが、ある日、長男の孫3歳(女子)がBさん宅に遊びに来た時、仏間から誰かと会話している声がしたので、様子を見に行くと、孫が人形に向かって、会話をしていました。その時は、あまり気にならなかったのですが、数日して、先日の仏間での事を孫に尋ねると「お姉ちゃんは、子供が居ないの、、。私の子供になるって言われたけど、、ママが居るからダメっていったら、じゃあ、、私が、ママになってあげると言われたの、、。」と、孫の話しを聞いて薄気味悪くなったBさんは、その日以来、孫を家に呼び寄せる事が出来なくなった様です。暫くして、ある日の事、長男から孫を預かって欲しいとの電話が有り、理由を聞くと嫁が交通事故に遭ったとの事、命には別状はないものの、足を骨折した様で、一週間程入院する事になりました。Bさんは、先日の事も有り、不安な気持ちでしたが、長男夫婦が大変な状況だと思い、孫を預かる事にした様です。孫には、仏間に行って人形と喋らない様に伝えましたが、預かって5日目、孫が高熱を出し、コロナに罹ってしまいました。すると、Bさんもコロナに感染し、結局長男が会社を休み、二人の看病をされました。その後、嫁も退院したものの、感染を避ける為に自宅で療養する事になりました。感染して3日目、仏間で話し声がしてきたので、襖を開けると、そこには、孫が人形に向かって「うん、うん、、。」と、頷いていたのです。それを見たBさんは怖くなって、孫を抱えて自分の寝室に連れて行きました。翌朝、長男に実家では預かれないと説明し、結局この家にはBさん一人になってしまいました。その日を境に、仏間に入る事が出来ず、主催者を通じて、私に辿りついた様です。当日、主催者の車でBさん宅に向かう予定でしたが、早朝、主催者から電話が入り、親族に不幸ごとが有り、行けなくなったとの連絡が入りました。私は、主催者の手配したタクシーでホテルからBさん宅に向かう事にしました。途中、Bさん宅迄もう少しというところで運転席側で、急に「ガーンっ」と大きな音がしました。この時、前から来た車が、センターラインを越えて、タクシーと接触事故をおこしました。衝撃もさほど感じられない位でしたが、互いのサイドミラーは、粉々になっていました。私は、タクシー会社が手配した別のタクシーで、Bさん宅に向かう事にしました。結局、Bさん宅には、予定より30分近く遅れて到着致しました。Bさん宅は、洋館風の立派なお宅でした。すると、長男さんが玄関で待機されており「先生、お身体大丈夫ですか?事故と聞いてビックリしました。どうぞ、お入り下さい。」と、家の中に入って行くと、高級そうな調度品が有り、Bさんは噂通りの、相当裕福な家庭で有る事を理解しました。応接間に通されると、大きなソファーに、Bさんが座っておられました。「Bさん、遅くなりすみませんでした。」「先生、ご無事でなによりです。お身体大丈夫ですか、、。」「ハイ、幸い軽い事故でしたので、私は何の影響もございません。」「先生、お店の方から聞いていると思いますが、人形の事で、ご相談が有ります。」「では、早速ですが、お仏壇を拝見致しましょう。」と、通されたのは、これまた立派な和室でした。すると、手前の和室に一間は有る立派な浄土真宗の仏壇が有り、沢山の花に囲まれる様にして、娘さんと思われる写真が飾られていました。「あの、、仏間に人形が飾られていると聞いたんですが、人形はどちらに有りますか?」「はい、実は長男に言って、娘の部屋に置いて貰いました。」「では、案内して下さい。」「先生、私は怖くて娘の部屋には行けません。長男と一緒に見て頂けませんか、、。」「分かりました。」と、長男さんの案内で2階の奥の部屋に通されました。すると、その人形はベッドの上に寝かされる様にして置いてありました。帽子の下からカールした茶色の髪の毛が、肩口辺りまで伸びており、目は大きく見開いて、瞳は少し水色を含んでいました。私が近く迄行こうとした時、急に膝の辺りにチカラが抜けた様になり、ふらつきながら壁に頭と肩をぶつけてしまいました。「大丈夫ですか、、。」「ハイ、ちょっと立ちくらみをしたみたいで、、。」「先生、交通事故の影響ですかね。もし、私に出来る事があれば、仰ってください。」「では、このお札を人形の額から顔にかけて貼って下さい。それから、白い布に包んで、滋賀の和順庵迄送って下さい。」「分かりました。」と言って、娘さんの部屋を後にしました。その後、応接間で、Bさんと息子さんを交えて1時間程話していた様ですが、、何を話したか、未だに記憶がなく、結局、鑑定らしい事もせず、息子さんの車でホテル迄、送って貰いました。ホテルに着くと、急に睡魔が襲ってきました。早く部屋で横になりたかったのですが、フロントに、先程のタクシー運転手と警察の方が待っていました。警察官から、事故の状況を聞かれたましたが、誘導されるままに応えていました。取り調べが終わり部屋に入った瞬間、私は、ベッドに倒れる様にして、そのまま眠ってしまいました。すると、、私は不思議な夢を見たのです、、。 つづく




