Dさんを見送った後、私は死霊解脱法に基づき、塔婆に梵字を書いていると、一瞬でしたが頭の中で背中ごしに、孤独に苦しむ男の姿が浮かびました。「お前には、良い思い出は無かったのか、、。」と、男に対し、心の中で呟きました。翌日、私は奈良県天川村に有る〇〇寺に、ご挨拶に行く予定でした。この寺は、私が大病した折に、病気に打ち勝つ為に、断食・護摩供養でお堂をお借りしたお寺です。到着すると、住職が出て来られ、「和順さん、久しぶりです。お元気でしたか、、。今日は、わざわざこんな田舎迄有難う御座います。」「その節は、お世話になりました。」「今日は、泊まって行くんでしょ、、。」「はい、そのつもりです。」「ところで、お連れの方は、どなたですか?」「いえ、、私一人ですが、、。」「だって、助手席の、、アレ?居なくなってる、、。」「どんな人でしたか、、。」「無精髭を伸ばしたジャージ姿に見えましたけど、、。てっきりお友達かと、、。」「心辺りが有りますので、また、お堂を借りても良いですか、、。それから、一座お護摩を焚きたいので、壇をお借りします。」「構いませんが、一人で大丈夫ですか?」「大丈夫です。」と、言ってお堂に入りました。以前にも、強い悪霊らしきモノと立ち会った事が有りましたが、今回ばかりは、誰かしらに憑依している訳でないので、反応を見る事が出来ません。はたして、上手くいくのか心配でしたが、こんな私に憑いて来るなんて、、。この霊も運の尽きというか、、もう尽きてるかぁ、、。」壇に火を灯し、護摩を焚きだすと、恐ろしい程、炎が真っ直ぐに立ちあがりました。こういう時は、大概上手く行っていると、自分なりに解釈しています。何度もブログでも言ってますが、私は霊媒師ではなく、密教行者であり他の人より感覚が敏感な僧侶です。ですから、この手の悪霊や祓いといったものは、本当に良くなられたかは、自分では分かりません。ですが、今のところ皆さん良くなられているところを見ると、密教秘奥義がいかに優れているかが分かります。お堂から出ると、「和順さん、大丈夫ですか、、。心配しておりました。先にお風呂に入られて、夕食にしませんか、、。」「はい。有難うございます。」私は、住職奥様の手料理をご馳走になりました。「和順さん、こんな田舎で美味しいモノがないですが、召し上がって下さい。」と、言われましたが、奥様の手料理は、並の料亭より、よっぽど美味しく感じます。住職が、「和順さん、私が見た男は何者ですか、、。」「恐らく、和順庵に来られた依頼者の関係者だと思います。」「やっぱり、幽霊というヤツですかね、、。初めて見ましたよ、幽霊、、。」「私はココに来るまで、全く気付きませんでしたが、私は、、よっぽど鈍感ですね。」「多分、和順さんに修行の世界に送られると思って、気付かれずにしていたかも知れませんね。」「それなら、何で憑いて来たんでしょう、、。」「霊も人間と一緒で、苦しい世界から逃れたいと思ったんじゃないですか、、。」「そうだと良いんですが、、。」「まさか、今晩私のトコに出ないでしょうね、、?」「それは無いと思いますよ、、護摩もキレイに焚けましたし、、。」と、修行時代の一時の休息を楽しむかの様に、二人の会話が弾みました。翌日昼頃、住職夫婦に見送くられながら、私は〇〇寺を後にしました。翌朝、和順庵に行くと、Dさんの兄に作成した塔婆が倒れていました。もう、供養は必要ないと、言われている様な気が致しました。ですが、その後も和順庵で供養を続ける様にしました。Dさんの依頼を受けてから1ヶ月が経過しましたが、何も連絡が無いので、大丈夫だったのか、、。そう願うばかりです。




