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涼しい話①

これは、今から10年近く前のお話しです。天台宗に出家した私は仏道行探求の為、修行の日々に明け暮れていた頃の出来事です。場所は、千葉県の○○寺本堂において、護摩修行を行じていた時でした。周りは田んぼに覆われ、灯り一つない山肌に囲まれた所にポツンと、そのお寺がありました。行中は寺で寝食し、外出は許されません。その日は、夜中2時頃に起床し、水行で身体を清め護摩行へと入って行きました。暫くすると、ヘッドライトの光が堂内を灯している事に気付きました。行中は、たとえ師匠や先達が来ようとも、振り向いたり行以外の動作をしてはいけない決まりになっていました。正面の仏を照らしていた灯りは、右に移動しながらエンジン音が近づくのが分かりました。「師匠が観にこられたかなぁ、、」と思いましたが、今までこの時間帯に来られた事はなく、不思議に思いながらも嬉しくも感じていました。ですが、駐車場に移動してからエンジンは鳴り響き、中々降りてこられませんでした。ヘッドライトは、右側から本堂横を灯している様でした。すると、ヘッドライトが消えドアの開閉音がして、砂利道を歩く複数の足音がしました。「こんな時間に複数人で来るのは有りえない。ひょっとすると、近所の人が泥棒と勘違いして、警察に通報したに違いない。」と、修行に集中している割に、現状を冷静に判断する自分がそこに居ました。行中は、たとえ警察官が来たとしても、職質には答える事が出来ません。その時でした、、誰かが入口の引き戸を開けたのです。一瞬、緊張がはしりましたが、侵入者の声を待つ事にしました。ですが、一向に話しかけてくる気配はありません。むしろ、強い視線を感じていたのです。何気に、正面に飾ってある額縁ガラスを見た時、私はとんでもないモノを見てしまいました。

和順庵
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