早速、加持祈祷をAさん宅で行じました。すると幾分空気が清らかになったと同時に、過去に私に起こった不思議な現象を思い出しました。皆さんは、施餓鬼供養をご存知でしょうか。餓鬼とは、亡くなった後に餓鬼道（がきどう）に堕ちてしまい苦しんでいる人たちに、お供え物をしたりお経を唱えたりすることで、苦しみを癒す行事です。餓鬼道に堕ちるのは、生前にむさぼる心を持っていた人や、卑しい行為をした人とされています。修行時代、竹藪で施餓鬼供養をしていた時、兄弟子から「供養した後、決して振り返らない様に気をつけて。」と言われていたのですが、その頃の私は興味の方が優っており、つい禁を破ってしまったのです。すると、どこからともなく突風が吹き、地響きと共に竹林が大きく音をたてて揺れていた事を思いだしました。餓鬼霊は、貪瞋痴を好みます。Aさんが受けたこれらの現象原因は、餓鬼霊によるものと思いました。私は、五輪の宝塔に見立てた塔婆に密教秘伝の術をつかい、餓鬼霊を封じ込めAさん宅を後にしました。和順庵に帰り、塔婆を護摩壇に供物と共に祀り、施餓鬼供養を行じました。今回、Aさんの霊現象は、いくつかの偶然が重なって生じたものと思われます。部屋の位置・周りの環境・入居者の性格や生い立ちによって、貪瞋痴の負のオーラや餓鬼霊を引き寄せたものと考えられます。また、Aさんの様な霊的影響を受けやすい人は、心優しい面倒見の良い方や肉体的・精神的に弱っている人に多く見られます。このケースは、一時的に良くなったとしても、引っ越ししない限り、再び不思議な現象に悩まされるだろうと思えるのでした。
